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広島高等裁判所 昭和35年(ネ)124号 判決

控訴人(被告) 広島国税局長

訴訟代理人 森川憲明 外七名

被控訴人(原告) 株式会社高林房太郎商店

主文

原判決をつぎのとおり変更する。

控訴人が被控訴人の昭和二七年七月一日から昭和二八年六月三〇日までの事業年度分法人税について昭和三三年七月二八日付でなした所得金額を金一、八四八、八〇〇円、法人税額を金八五二、五七〇円とする旨の審査決定は、所得金額金一、七六四、八〇〇円及びこれにより算定した税額をこえる部分を取消す。

控訴人が被控訴人の昭和二八年七月一日から昭和二九年六月三〇日までの事業年度分法人税について昭和三三年七月二八日付でなした所得金額を金二、九二四、七〇〇円、法人税額を金一、二七五、五一〇円とする旨の審査決定は、所得金額金二、八四〇、七〇〇円及びこれにより算定した税額をこえる部分を取消す。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも五分し、その二を控訴人の、その三を被控訴人の各負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。訴訟費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、つぎの第一、第二、第三に記述するほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

第一、原判決五枚目表終りから二行目中「月額九万六千円」とあるを「月額九千六百円」と訂正する。

第二、控訴代理人はつぎのとおりのべた。

一、被控訴人の法人税確定申告における法人税額は昭和二七事業年度分金七〇三、二五六円、昭和二八事業年度分金一、一六九、六一九円である。

二、高林房太郎、高林むめこに対する役員報酬は、被控訴人と業種、業態、規模等において類似する法人の役員報酬に比し著しく高額である。すなわち、被控訴人の営業は金物卸売を主とするものであり、その売上金額は昭和二七事業年度金九一、一五七、〇〇〇円、昭和二八事業年度金九四、七一五、〇〇〇円であるので、これに類似するものとして、広島国税局管内に納税地を有する法人並びに被控訴人の納税地である鳥取県と経済力の類似する福島、熊本、島根、佐賀の四県及び鳥取県の五県内を納税地とする法人中、金物卸売を業とし、昭和二七、二八事業年度において年間売上金額が三千万円以上三億円未満である法人を調査したところ、これに該当するものが昭和二七事業年度につき四一社、昭和二八事業年度につき五七社あり、右各法人(比較法人と略称する。)と、被控訴人につき、被控訴人の昭和二七、二八各事業年度における役員―いずれも常勤―及びこれに支給した報酬月額が、代表取締役高林房太郎三万円、専務取締役高林健治四万円、監査役高林むめこ三万円であることを基準とし、役員一人当りの平均報酬月額、売上及び給与総額(役員報酬を含む)に対する役員報酬の各割合を対比すると、別紙第一表のとおり被控訴人の役員報酬が比較法人に比し高額なことが明らかであり、右は高林房太郎及び高林むめこに対する役員報酬が著しく高額であることによるものであつて右報酬中適正額をこえる部分は、法人税法第三一条の三(改正前)により損金への計上を否認すべきである。

三、そこで右両名に対する報酬の適正額いかんであるが、右は前記比較法人のうちから、右両名と地位、経験、能力、勤務状況等の類似する役員を抽出し、これとの比較によつて判定するのが相当である。

(一)  高林房太郎に対する関係。

(1) 同人は被控訴会社の代表取締役であるが、高齢のため会社業務の統轄は、その長男である専務取締役高林健治に一任し、自らは右健治に助言しこれを後見する程度であつて、被控訴会社の事業に関係のない籾穀燃焼器の研究に従事していたものであり、右房太郎に対する報酬は前記のごとく被控訴会社において高林健治に対する報酬に次いで高額のものであるから、比較法人の役員中、右房太郎同様、会社業務の統轄を行わず、かつ二番目に報酬の高い常勤役員に対する報酬月額を調べると別紙第二表の一のとおりである。

(2) 右比較法人中、被控訴人の使用人の数、昭和二七事業年度一二名、昭和二八事業年度一一名を基準として、これに類似する使用人数八名以上一六名以下の法人の二番目に報酬の高い常勤役員に対する報酬月額を調べると別紙第二表の二のとおりである。

(3) 高林房太郎が六〇歳をこえ、その前記のごとき勤務状況と、同人が被控訴会社において二番目に高額の報酬をうけていることを基準として、前記比較法人中、右に類似する、会社代表者であるが比較的高齢で、会社業務を自ら統轄せず、顧問的役割をなし、代表者以外の役員に次ぐ報酬をうけている常勤役員の報酬月額を調べると別紙第二表の三のとおりであり、そのうち男子役員の報酬月額は同表の四のとおりである。

(二)  高林むめこに対する関係。

同人は高林房太郎の妻であつて、被控訴会社の監査役であり、現実には主として使用人の職務に従事し、その経験年数は二〇年以上であるので、右のことがらを基準として、前記比較法人中からこれに類似する者を抽出してその報酬月額を調べるとつぎのとおりである。

(1) 右比較法人中、常勤監査役の報酬月額は別紙第三表の一のおりである。

(2) 前記比較法人中、常勤女子役員の報酬月額は別紙第三表の二のとおりであり、そのうち経験年数二〇年以上の者の報酬月額は同表の三のとおりである。

(3) 前記比較法人中役員の妻が常勤役員または使用人で経験年数二〇年以上の者の報酬または給料月額は別紙第三表の四のとおりである。

四、以上のとおり、比較法人の報酬及び給与を種々の観点から勘案してみても、前記房太郎及びむめこに対する報酬の適正額は、控訴人が認容した額、すなわち房太郎につき月額金二三、〇〇〇円、むめこにつき月額金一七、〇〇〇円をこえるものでないことが明らかであるから、控訴人が右房太郎、むめこに対する役員報酬中、右金額をこえる部分について、損金への計上を否認したことは相当であるというべきである。

第三、被控訴代理人は、前記第二の二から四までの控訴人主張に対しつぎのとおりのべた。

一、高林房太郎、高林むめこの両名は、早朝から夜間に及びほとんど年中無休で会社業務に従事しているものであつて、右の勤務状況は、報酬の相当性判定に重大な関係を有するのであるが、控訴人の主張はこの点を考慮しないものであるから失当である。

二、控訴人は比較法人に対比し被控訴会社の役員一人当りの平均報酬額の均衡を云々するけれども、被控訴会社は、他に例のない小数役員で会社業務を掌理しているのであるから、一人当りの平均報酬月額が高額であることは当然であるし、また、役員報酬額は、法人の所得の多寡にしたがうものであつて、被控訴会社のごとく高収益を常態とする法人にあつては低収益の法人に比し、役員報酬額がより高額であることも当然であるから、右両名に対する報酬を必要経費として認めないことは許されない。

当事者双方の提出援用した証拠及び書証の認否は…(証拠省略)…ほか原判決事実摘示立証欄と同一であるから、これを引用する。

理由

一、本件記録添付の被控訴会社登記簿謄本(記録四八八丁)によると、被控訴会社は、昭和三五年七月一日有限会社高林房太郎商店の組織を変更したものであることが認められ、原審証人高林健治の証言によつて真正に成立したと認められる甲第七号証の二及び五によると、被控訴人が右有限会社高林房太郎商店当時、米子税務署長に対し、法人税の確定申告として、昭和二七年七月一日から昭和二八年六月三〇日までの事業年度(昭和二七事業年度)の法人税額を金七〇三、二五六円、昭和二八年七月一日から昭和二九年六月三〇日までの事業年度(昭和二八事業年度)の法人税額を金一、一六九、六一九円と申告したことが認められる。そして、米子税務署長が右昭和二七事業年度の法人税額を金九五三、三七〇円、右昭和二八事業年度の法人税額を金一、三六五、三五〇円とする各更正処分をなし、被控訴人が右各更正処分を不服として、控訴人に対し審査の請求をしたところ、控訴人は昭和三〇年一月一三日付で、右各更正処分を一部取消し、昭和二七事業年度の法人税額を金九三八、二五〇円、昭和二八事業年度の法人税額を金一、三五〇、九一〇円とする旨の審査決定をなしたが、控訴人は昭和三三年二月一三日に右各審査決定を取消した上、同年七月二八日付で、昭和二七事業年度の法人税額を金八五二、五七〇円、昭和二八事業年度の法人税額を金一、二七五、五一〇円とする旨審査決定の変更をなし、その頃、その旨を被控訴人に通知したことは当事者間に争いがない。

二、控訴人が、右のごとく、一たんなした審査決定を変更したことは、当裁判所もこれを適法と判断するものであり、その理由は原判決の当該理由(原判決理由二の(一))と同一であるから、これを引用する。

三、被控訴人が、昭和二七、二八事業年度の各所得額算定にあたり、被控訴会社代表取締役高林房太郎及び監査役高林むめこに対する報酬月額各金三万円、年間合計額金七二万円を損金として計上したこと、被控訴会社が法人税法第七条の二第一項所定の同族会社に該当するものであること、控訴人が右報酬額の損金算入につき、法人税法第三一条の三(改正前、以下同じ)の規定により前記審査決定の変更によつて、右報酬月額中房太郎につき金二三、〇〇〇円、むめこにつき金一七、〇〇〇円を各こえる部分、年間合計額金二四万円を損金に算入することを否認したことは、当事者間に争いがない。よつて、右否認の適、否について判断する。

四、法人税法第三一条の三の規定により、役員報酬を損金に算入することを否認するには、役員報酬が、役員の職務に対する対価として不相当に高額と認められるばあいであることを要し、その対価が相当かどうかは、当該役員の職務内容、職務に従事する程度及び経験年数、当該法人の業種、規模、所在地、収益、使用人に対する給料の支払状況、当該法人と同種の事業を営む法人で事業規模が類似するものの役員に対する報酬の支給の状況等を勘案してこれを決すべきものと解する。

五、そこで、被控訴会社の規模、収益、使用人に対する給料の支払状況等について調べるのに、原審証人高林健治の証言によつて真正に成立したと認められる甲第七号証の一ないし六、成立に争いのない同号証の七ないし一一、甲第一三号証の六、前記高林証人の証言と弁論の全趣旨によると、高林房太郎はその妻高林むめことともに大正一〇年頃から個人で金物商を営んでいたが、昭和一六年頃、有限会社高林房太郎商店を設立し、その営業は金物卸売を主とし、資本金は、昭和二七事業年度一八〇万円、昭和二八事業年度三五〇万円、役員は両事業年度とも代表取締役社長高林房太郎、専務取締役として同人の長男高林健治、監査役高林むめこの三名で、いずれも常勤役員で、これに対し支給した報酬月額は高林健治四万円、高林房太郎及び高林むめこ各三万円であること、売上金額は、昭和二五事業年度金二二、三九〇、八九〇円、昭和二六事業年度金四六、三六四、三一六円、昭和二七事業年度金九一、一五七、〇〇〇円、昭和二八事業年度金九四、七一五、〇〇〇円、所得金額は、昭和二六事業年度金五、一二六、八〇〇円、昭和二七事業年度確定申告額金一、六一八、三〇〇円、昭和二八事業年度確定申告額金二、六三九、一〇〇円、従事員は昭和二七事業年度一二名、昭和二八事業年度一一名、昭和二七事業年度における従事員中の最高給者に支給した賞与を含む年間給与額は金二〇九、五九九円、月額金一七、四六六円、株主配当金は、昭和二七事業年度金五四万円、昭和二八事業年度金五五七、四七九円、役員賞与金は、昭和二七事業年度金一六万円、昭和二八事業年度金二〇万円であることがそれぞれ認められる。

六、つぎに、高林房太郎及び高林むめこの職務内容及びその職務に従事する程度について調べるのに、

(一)  高林房太郎について、

成立に争いのない甲第一三号証の四ないし八、原審証人田渕祐一、三沢良雄、高林むめこ、高林健治、原審における被控訴会社代表者本人尋問の結果によると、高林房太郎は、前示の被控訴会社設立当初から代表取締役の地位にあり、昭和二七、二八事業年度においても会社業務を統轄していたものであること、もつとも、その長男高林健治が昭和二四年頃取締役に就任したので、その後は会社代表者としての統轄業務の一部を事実上同人をして行わせ、自らはこれが監督と、余暇を利用して会社のため、会社が製品を販売する計画のもとに籾穀燃焼器の研究をするにいたつたが、大口取引、高額の資金の借入等重要な業務については自らその職務を行つていたことが認められる。控訴人はこの点について、昭和二七、二八事業年度において、房太郎は統轄業務のすべてを高林健治に一任し、自らはその後見的役割をなしたにすぎない旨及び前記燃焼器の研究は個人としての研究で会社業務に関係がない旨主張し、原審証人藤井正雄、横山正之、岩崎次登の右主張にそう証言があるが、右各証言はいずれもその根拠が薄弱であるので信用しがたい。

(二)  高林むめこについて、

成立に争いのない甲第一三号証の五、六、七、原審証人田渕祐一、三沢良雄、高林むめこ、高林健治、横山正之、藤井正雄、岩崎次登の各証言及び原審における被控訴人代表者本人尋問の結果によると、高林むめこは昭和一六年被控訴会社設立以来その役員として被控訴会社の業務に従事して来たものであつて、昭和二七、二八事業年度において被控訴会社の監査役として常勤していたのであるが、監査役本来の職務に従事した程度はごく一部であり、ほとんど金銭出納、会計帳簿の記帳整理、商品の販売、来客の応待等使用人としての職務に従事していたことが認められ、前記甲第一三号証の五、六中及び田渕証人の証言中右認定に反する部分はにわかに信用しがたい。

七、そこで高林房太郎及び高林むめこに支給された報酬額に関し、被控訴会社と類似する他の法人の役員に対する報酬の支払状況を調べるのに、当審証人米沢久雄の証言(第一回)と弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる別紙第五書証目録一記載の乙各号証、当審証人米沢久雄の証言(第二回)と弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる別紙第五書証目録二記載の乙各号証と右米沢証人の各証言によるとつぎの事実が認められる。すなわち、

控訴人において、広島国税局管内に納税地を有する法人並びに被控訴会社の納税地である鳥取県と経済力の類似する福島、熊本、島根、佐賀の四県及び鳥取県の五県内に納税地を有する法人中、金物卸売を業とし、昭和二七、二八事業年度において年間売上金額が三千万円以上三億円未満の法人を調査したところ、これに該当するものが昭和二七事業年度につき四一社、昭和二八事業年度につき五七社あり、右調査結果によると右各法人中、会社の業務統轄者ないしこれに準ずる役員に対する報酬として月額三万円以上を支給したものが、昭和二七事業年度、一三法人、一四名、一法人二名のもの一、昭和二八事業年度、二二法人、二八名、一法人二名のもの四、三名のもの一があること。前記法人中、常勤監査役の一名当り平均報酬月額は昭和二七事業年度、男女を通じ金一二、三九〇円、女子金九、四五〇円、昭和二八事業年度、男女を通じ金一二、七一五円、女子金八、九七五円であり、女子常勤監査役の最高額は両年度とも金一万円である。以上のとおり認めることができる。

八、右五、六、七で認定した事実によると、

(一)  被控訴会社が昭和二七、二八事業年度に、高林房太郎に支給した報酬額は前記四で説明したところに照らし相当な対価と認めるべきであり、控訴人のなした全立証によつても、右報酬額中金二三、〇〇〇円をこえる部分を損金に算入することを否認するにたる事由を見出しがたい。もつとも、前記七記載の類似の法人についての調査結果によると、別紙第一表記載のとおり役員一人当りの平均報酬月額、売上及び給与総額に対する役員報酬の各割合において、類似の法人に比し被控訴会社が高額であることがうかがえるが、右を以てはいまだ前記認定をくつがえすにたらないし、控訴人の、別紙第二表にもとづき房太郎に対する報酬額が不当に高額であるとの主張は、同人が会社代表者とし業務の統轄を全く担当せず、後見的地位のみにあることを前提とするものであつて、右前提事実は前記六の(一)で説明したとおり当裁判所の認めないところであるから、右主張も採用できない。

(二)  つぎに、監査役高林むめこは、前示の如く昭和二七、二八事業年度において、常勤監査役としての職務のほか、使用人としての職務にも従事したものであるが、有限会社法第三四条、商法第二七六条によれば、監査役は使用人を兼ねることができないのであるから、法人税法第三一条の三を適用する関係においては、同人が被控訴会社から受ける報酬は常勤監査役としての職務に対するものとして計算せられるべきものである。そして、前に認定したとおり、同女が監査役本来の職務に従事した程度はわずかであり、ほとんど使用人としての職務に従事していた事実、被控訴会社に類似する他の法人における女子常勤監査役の平均報酬月額は昭和二七事業年度において金九、四五〇円、昭和二八事業年度において金八、九七五円であり、その最高額は両年度とも金一万円である事実、被控訴会社の使用人中の最高給者に支給された昭和二七事業年度における賞与を含む年間給与額は金二〇九、五九九円、月額金一七、四六六円である事実並びに原審証人高林健治の証言により真正に成立したと認められる甲第一号証の二、三により認定しうる、被控訴会社において経理事務を担当していた女子事務員前崎幸子の当時の給与月額が約金八千円であつた事実を考慮すると、たとえ高林むめこが被控訴会社の設立以来その業務に従事していたものであるとしても、前記両年度における同女に対する適正報酬月額を金一七、〇〇〇円と認め、右をこえる同女の報酬部分を損金に算入することを否認した控訴人の本件処分は相当であるといわねばならない。

九、以上により、控訴人において、高林房太郎に支給された報酬中月額金二三、〇〇〇円をこえる部分を損金に算入することを否認したのは違法であり、高林むめこに支給された報酬中月額金一七、〇〇〇円をこえる部分を損金に算入することを否認したのは違法というべきである。そして、被控訴人が取消を求める本件各審査決定中ほかに違法の点を認むべき資料はない。

成立に争いのない甲第一一号証の一ないし四によると、控訴人が本件各審査決定において、被控訴人の昭和二七事業年度法人税の課税標準となるべき所得金額を金一、八四八、八〇〇円、昭和二八事業年度法人税の課税標準となるべき所得金額を金二、九二四、七〇〇円と決定したことが認められる。そうすると、被控訴人の右事業年度の法人税の課税標準となるべき所得金額は、前記各決定の各所得金額から右各決定において高林房太郎に支給した報酬額中、控訴人が損金に算入することを否認した年額各金八四、〇〇〇円を控除した昭和二七事業年度金一、七六四、八〇〇円、昭和二八事業年度金二、八四〇、七〇〇円というべきであり、右各審査決定中右金額をこえる所得金額の部分及びこれにより算定した税額をこえる部分は、いずれも違法として取消さるべきである。

よつて、被控訴人の本訴請求は、右の限度において認容すべきであり、その余は失当として棄却すべきであるから、民事訴訟法第三八六条にしたがい右と異なる原判決を変更することとし、訴訟費用の負担につき同法第九六条、第九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松本冬樹 胡田勲 長谷川茂治)

(別紙)

第一表

比較事項

事業年度

被控訴会社

比較法人

広島国税局管内

福島、熊本、島根、佐賀、鳥取県内(同族法人)

非同族法人

同族法人

一人当り平均報酬月額

二七

三三、三三三円

二一、四〇一円

二〇、〇四四円

一八、八六二円

二八

三三、三三三円

二四、三〇三円

二二、〇五八円

二〇、六〇三円

売上に対する役員報酬の割合

二七

一・三一%

一・一一%

一・〇〇%

〇・九一%

二八

一・二六%

〇・九〇%

一・〇六%

〇・九四%

給与総額に対する役員報酬の割合

二七

五〇・三〇%

四七・七〇%

四一・四〇%

三八・二〇%

二八

四三・九〇%

三五・二〇%

三一・九〇%

三七・三〇%

第二表

枝番

納税地

報酬額

事業年度

広島国税局管内

福島、熊本、島根、佐賀、鳥取県内

非同族法人

同族法人

同族法人

法人数

一人平均報酬

法人数

一人平均報酬

法人数

一人平均報酬

二七

二〇、三五七円

一四

一九、五三九円

一八

一八、七七三円

二八

二二、一〇三

二五

一九、三七一

二三

二〇、四三八

二七

一五、二五〇

二一、五〇〇

一〇

一九、四六六

二八

二〇、四七七

一四

二一、三七四

一三

二〇、五七六

二七

一二、〇〇〇

一五、八〇〇

二二、七〇〇

二八

一四、六六六

一六、六三三

二二、七〇〇

二七

一二、〇〇〇

二〇、二〇〇

二二、七〇〇

二八

一四、六六六

二〇、二〇〇

二二、七〇〇

第三表

枝番

納税地

事業年度

広島国税局管内

福島、熊本、島根、佐賀、鳥取県内

非同族法人

同族法人

同族法人

法人数

役員数

一人平均報酬

法人数

役員数

一人平均報酬

法人数

役員数

一人平均報酬

二七

一六、六三六円

一一、四三八円

一四、七〇八円二八

二八

一七、二〇八

一〇、九六〇

一三、二二五

二七

九、八一〇

八、四四四

二八

一〇

一〇、八二五

一四

一〇、四二三

二七

七、九五〇

七、七五〇

二八

一〇、四六二

八、五五〇

二七

(使用人)

八、八三三

(うち使用人二)

七、七一六

(うち使用人一)

五、七五〇

二八

(使用人)

九、一六六

(うち使用人五)

八、四九〇

(うち使用人二)

六、八〇四

第四、五(書証目録省略)

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